都立高校からイギリスへ

都立高校からイギリスへ

普通の日本人の私が、UCLのファウンデーションコースを経てUKの大学に行くことにしました。

【私見】UCAS出願においてUCLのPolitics, Sociology and East European StudiesはPIRのInsuranceになりうるのか

今回のテーマはタイトルの通り。

UCAS出願においてUCLのPolitics, Sociology and East European StudiesはPolitics and International RelationsのInsuranceになりうるのか。

背景

UCLの進学準備コースからUCLの学部に進学する日本人にはいろいろな進路を取る人がいるがその中でUPC→UCLのPolitics and International Relationsというのはよくある希望である(ここ3年分の日本人の進路をほぼ把握してきたのでそう大括りにできる)。

しかし、UPCからUCLのPIRはGuranteeされておらず、このコースを第一志望とした場合、UCLに留まるためにGuranteesされているInsuranceのコースを選んでおく必要がある。この辺のことは、過去のブログにも書いているのでこちらを読んでほしい(すみません)。

UCAS出願を振り返る① (制度編) - 都立高校からイギリスへ

UCAS出願を振り返る②(体験談編) - 都立高校からイギリスへ

その際に、Politicsという同じ名前を関するPolitics, Sociology and East European Studiesというコースが選択肢に上がるのである。実際UPCに進学した/出願を検討している方から問い合わせをいただくことも多く、ここ3年で色々と考えることがあったのでまとめたいと思う。

なお、メールで問い合わせてくれた人や個人的に話してくれた人たちで、「こいつ私に言ったことブログにまとめてるな」と思ったら、実際そうなので(私は全ての留学相談を自分のために記録しているので)申し訳なく思う。が、色々な人にちょっとずつ違う視点から回答している部分もあるので、いろいろな人に言ったことをここに包括的にまとめることで、何らかの益になればと思う。

あと、毎回言っているが、「ここに書くから聞くな」ということではなく、俺にメールする手間なく情報にアクセスできてほしいという気持ちなので、ここに書いてあっても全然メール/メッセージして欲しいし、わからなかったら気軽に連絡してほしい。

 

他の選択肢としてよく聞くコース

その前に、Guaranteeのうちで他の選択肢として聞くものをあげる。

Social Sciences BSc

社会学・社会政策・教育学・心理学のコンビネーション。「社会科学」だが、政治学国際関係論はあまり多くない。教育学部が教えている。

Politics, Sociology and East European Studies BA (PSEES)

タイトルにはないが、社会学政治学・国際関係論と地域研究。

Politics, History and Economics BSc (PHE)

政治学・歴史・経済。年次が上がるごとにひと科目ずつ落としていきお、3年次にはどれかの科目の専門になる。PSEESと同じスラブ東欧研究学部が教えている。

 

Guranteeでないものでいくと、この辺もあると思う。

Politics and International Relations BSc UCL

これが一番人気。

International Social and Political Studies BA UCL

一年の交換留学を含む。言語一つと、法学・政治学・国際関係論とか。選んだ言語で交換留学に言って、計4年で卒業。

このうち、PSEESについて述べる。

 

地域フォーカスはどこなのか?

Politics, Sociology and East European Studies BA (PSEES)は、その名の通り東欧研究の要素が含まれる、と言いたいのだが、厳密には違う。PSEESの対象地域は「旧ソビエト共産党諸国」であるため、

・東欧の国々(図 1 で薄いピンクの国)

・ロシア、ウクライナバルト三国(リトアニア、ラトヴィア、エストニア)

・サウス・コーカサス(図2濃いピンク)・中央アジア(図2トルクメニスタンとか)

・旧ユーゴスラビア諸国(図 3)までが範囲。下の地図で色がついている国は全部カバーされていると思って良い(+アルバニアブルガリアまで)。そのような点では、パッと見た時の印象よりも対象範囲が広いといえよう(だからと言って日本人に関わりの強い地域であるかは微妙だが)。

 

なので、上の地域以外を見たいならば、自由履修の制度を使うことになる。大学 1 年は 120 コマ(i.e. 8 科目)のうち他の学部から取れる授業はないが、大学 2 年と 3 年の間で 30 コマ(i.e.2 科目)までは他の学部から授業を取れることになっている。私は本来International Social and Political Studies BA のコースの授業のPolitics of Japan を大学 2 年で 、 3 年で Politics of East Asiaを取った。

ただ、Moodle Catalogue を見ると(UCLの全ての授業を閲覧できるページ)、アジアの政治や国際関係論系の授業は、そもそもあんまり選択肢がないことがわかる。SOAS がいっぱい持ってるから(多分)。

これらの地域のフォーカスが問題になる場面

上記の地域の性格は、以下のような場面で感じることになると思う。

①卒論のテーマ (一番大きい)

・政治・国際関係論の中の何かしらの Theory について書くか

・上記地域の社会・政治・国際関係論関係のトピックについてリサーチをするか

の二択になっていて、上は完全に抽象論になるから(民主主義とは何か、とか)。下が推奨されている。その際に、これらの地域に全く興味がなかったらかなりしんどいと思う。

②先生の得意分野

理論系の授業でも、教えている先生が上記地域の専門家の先生なので、例題として使われるケース・スタディが上記地域の内容となる。(例: 民主主義の授業→ポーランドにおける民主主義の後退、とか)。

③授業の履修

学年が上がるにつれて、理論分野(国際関係論の理論、とか)から、地域のフォーカスを絞って分析する授業が増える。その際に、地域に興味がなければ選びたい授業がなくなる可能性はある。

実際の授業の内容

私はかなり地域フォーカスから身を引いた+国際関係論偏重履修の内容にしてきたので、その様子を追ってみたいと思う。スクリーンショットとして貼っている内容は、すべて

UG Handbook (Politics & Sociology) | UCL School of Slavonic and East European Studies (SSEES) - UCL – University College London

からアクセスできるので、詳細を知りたい人はそちらを別途みてほしい。

⚫︎1 年

・一年の必履修(Compulsory)は理論ばかりで、東欧っぽい感じはあまりなかった。

・Optional はご覧の通り地域色が強い内容になっている。

・残りの自由のもので国際関係論導入授業を取ることができる(45 credits)。たとえば SESS0082 - Introduction to International Relations: Concepts and Ideas (15 credits, Term 1)みたいな授業があって、これは普通の(地域バイアスのかかっていない)国際関係論理論導入だった。

⚫︎2 年

・Comparative Political Analysis は比較政治学理論で、普通に理論だった。Researching Politics and Society は卒論準備のためのメソドロジーの授業。

・2 年目からは地域フォーカスが増える。Post-Soviet Politics and Society とかは、中央アジアコーカサス・ロシアとかの国際関係と政治という感じだった。地域フォーカスがないものだと、The History of European Political Ideas(政治哲学史、地域フォーカス全くなし)、Concepts of Security(国際関係論の中の安全保障論、地域フォーカス全くなし)、とかがあった。

⚫︎3年

・3 年目は地域フォーカスの授業か、メソドロジーの授業をとる。国際関係論(一つの国から、地域の様子を分析する)っぽい感じが増える。たとえば European Security(ヨーロッパの安全保障)、International and Regional Politics of Eurasia (中央アジアコーカサス・ロシアとかの国際関係)、Governance in the Era of Global Complexity: Eurasia and Beyond(ユーラシア大陸の政治)とか。

・卒論の地域が決まってるから、自分でこの地域関係のことを読むことになる。

 

このように見てくると、国際関係論系の授業は意外とあることがわかる。一方で、やはり学年が上がるにつれて、上記いずれかの地域にフォーカスしていく様子は否めない(そりゃそうだ)。

なお、他の選択肢で述べたHistory, Politics and Economics のPoliticsも同じ学部が教えているので、基本的にはPoliticsの同じ授業をとっている。

 

誰がPSEESに向いていて、誰が向いていないのか

ここまで述べてみて、私の独断で、誰がPSEESに来て幸せになれて、誰がなれないのかを考える。

おそらく幸せになれないひと

・上記以外の地域に直接の興味がある:多いのは日本。日本について卒論を書く方法は、よっぽどうまく比較政治学の視点を持ち込まない限り難しいんじゃないかと思う。難しいとしたのは、ロシアと日本の領土問題、とかは絶対できるし、、日本の移民政策と東欧のそれ、とかはできなくもないが、リサーチ・デザインが難しいと思う。合わせて、卒論で言うならば、アメリカの民主主義、中南米植民地主義、とかはほぼ確実に卒論のテーマにできない(中南米の話はする方法を今思いついたが、長くなるので省略)。

 

幸せになれる可能性があるひと

・上記の地域に何らかの興味がある:ためらう理由はないし、むしろPIRよりこっちの方が良い。

・上記の地域が頻繁にケーススタディとされる分野に興味がある:上の要素は「地域への興味」だったが、「理論への興味」がうまくつながる可能性もある。たとえば、「民主主義の後退」はポーランドハンガリー、「連邦制」はボスニア・ヘルツェコヴィナの二重連邦制、「権威主義」ならロシア、みたいな感じで繋げることはできる。

・上記の地域に間接的に興味がある:たとえば、「中国の一帯一路政策」とかは中国が西進して中央アジアに進出している話だから、卒論や履修を通して知識を深めることができる。

 

ちなみに私の場合は、自分が興味のある「記憶の政治(Memory Studies)」と言う分野が、旧ソビエト地域と、ホロコースト研究の分野で発展してきた経緯があり、その観点から中央アジアとか、バルカンとか、ロシアとかをみている履修をすると、ドンピシャの履修になった。実際卒論も躊躇いなく旧ユーゴの共同教科書にできたので、結果論的にはよかったと思っている。心の底から(マジで)PIRに落ちたのは別の話で死ぬほど悔しかったし、落ちちゃうと後から何言っても負け犬の遠吠えにしかならないのはわかっているけれど。

まとめ

政治学や国際関係論の授業は、「地域の知識」を追求するやり方と、「理論の知識」を追求するやり方がある。PSEESは前者を優先としたコースであるが、後者もケース・スタディが上記の地域にあるのであれば、PSEESで追求することができる可能性はある。大学3年間ってやっぱり長いし、その後の人生にも影響する部分もあると思うから(私は就活の時に、結局大学でやったことを強く意識したけど、人によるとは思う)、少しでも幸せな人生を送る一助としてほしい。

ちなみに私は外務省のインターンで欧州局中央アジアコーカサス室と言うところに入れてもらったのだけれど、2年でも3年でも中央アジアコーカサスを扱う履修をしていたので、本当に勉強になったし興味深かったし心に残った。

 

おまけ

進路に悩めるファンデーションコース生と高校生は、いっかい日本語の教科書を読んでみて、興味のある分野を考えてみたらいいと思う。

公務員試験の時の対策の教科書で、大学の勉強とダブってるなと思ったのがいくつかあったので上げておく。

政治学 (政治学 補訂版 New Liberal Arts Selection):一般的な政治学の教科書。

Andrew HeywoodのPoliticsに対応。

国際政治学 (国際政治学 New Liberal Arts Selection):一般的な国際関係論の教科書。The Globalisation of World Politicsに対応。

ちなみに上記2冊(英語)はファンデでも使うし、学部一年でも使った。

政治過程論(政治過程論 有為閣アルマ):いわゆる比較政治学(2年次)はこの辺でカバーできる。

新書とか、教科書とか色々読んでみて、自分がどう言うことを勉強したくて、その勉強の中には何が含まれるのかーどの地域なのか、どう言う理論なのかーとかわかってたら強いと思う。だけど、私はそこまでできてない状態で進学したから、思うだけである。